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51歳で予備自衛官補になった体験談シリーズ

第5回:射撃訓練と初めての小銃との出会い

89式小銃を手にした瞬間から実弾射撃まで、緊張と興奮の射撃体験

予備自衛官補の訓練で、多くの人が最も印象に残るのが射撃訓練です。日本の一般社会では、実銃を手にする機会はまずありません。そのため、多くの人にとって「小銃を持つ」という体験は非日常であり、緊張と興奮が入り混じる瞬間となります。ここでは、私が初めて小銃に触れたときの感覚から、射撃訓練の流れ、そして精神的に得たものまでを詳しくお話しします。

🔫1. 初めての小銃との出会い

訓練数日目、いよいよ「89式小銃」を手渡される日がやってきます。初めて見ると、その大きさと重さにまず驚きます。全長約92cm、重量約3.5kg。数字で見ると大したことないように思えても、実際に担ぐとズシリとした存在感があります。

「これが自衛官の象徴か…」

そう感じた瞬間、背筋が自然と伸びました。

🔧2. まずは分解結合から

射撃訓練といっても、いきなり弾を撃たせてもらえるわけではありません。まずは分解結合(フィールドストリッピング)を徹底的に学びます。

📋分解結合で学ぶこと

  • 小銃を安全に取り扱う方法
  • 部品の分解・清掃・組み立て
  • 正しい携行の仕方

最初は部品の名前も分からず、右往左往するばかり。班長に「そこは遊底覆いだ!」と叱られる場面もありました。しかし、繰り返すうちに手が覚え、1分以内に分解結合できるようになります。

🎯3. 射撃姿勢の基本

射撃の前に学ぶのが姿勢

👤3つの射撃姿勢

  • 伏射(うつ伏せで撃つ姿勢)
  • 膝射(片膝をついて撃つ姿勢)
  • 立射(立ったまま撃つ姿勢)

特に伏射は最も安定して命中率が高い姿勢とされます。地面に頬をつけるような感覚で銃を構えるのですが、最初は土や砂利が顔に当たり、痛くて集中できません。

ここで役立ったのが肘用のサポーター。地面に肘をつけるので擦りむきやすいのですが、サポーターがあるだけで快適度が段違いでした。

🎯4. 射撃場での緊張

いよいよ射撃場へ。耳栓を装着し、安全確認を受け、弾倉が配られる瞬間――緊張感は最高潮に達します。

「装填!」という号令のあと、初めて実弾を薬室に送り込む音を聞いたとき、空気が一変しました。普段の訓練とはまったく違う「戦場のリアルさ」を感じた瞬間です。

💥5. 初めての発砲

「撃て!」

号令とともに引き金を絞ると、

――ドンッ!

腹に響く衝撃音とともに、銃が跳ね上がります。映画で見るよりも、ずっと重く鋭い音。

最初の数発は的にかすりもしませんでした。引き金を引くときのわずかな力みで照準がズレるのです。

班長から「呼吸を止めるな、吐きながら撃て!」と指導を受け、徐々に命中率が上がっていきました。

📊6. 成績とプレッシャー

射撃訓練では「命中精度」が記録されます。一定以上の得点を出さなければ合格にならず、再訓練が必要になることも。

私の班でも、何度撃っても当たらず涙ぐむ人がいました。そのとき班員全員で励まし合い、「次はいける!」と背中を押したのを覚えています。射撃は単なる技術訓練ではなく、「仲間と支え合う試練」でもあるのです。

🧽7. 射撃後の清掃

射撃が終わったあと、さらに大変なのが小銃の清掃。火薬で銃身が汚れるため、徹底的に掃除をしなければなりません。ブラシで擦り、油を塗り、部品を点検――これを怠ると錆びや故障の原因になります。

夜遅くまで小銃を磨いていると、部屋中が「銃油の匂い」で充満します。慣れないうちは気分が悪くなる人もいました。

💡8. 射撃訓練で得たもの

射撃訓練を終えて私が得た学びは、単に「銃を撃てるようになった」という技術ではありません。

🎓射撃訓練から得た学び

  • 緊張下で冷静に動作する力
  • 指導を素直に受け入れる謙虚さ
  • 仲間と支え合う協調性

これらはビジネスや日常生活にも通じるものでした。

😨9. 射撃と恐怖心

多くの人が感じるのが「銃は人を殺すための道具だ」という現実。撃つたびに、命の重さを意識させられます。この恐怖心を乗り越えることで、逆に「戦争を起こしてはいけない」という思いが強くなりました。

⚠️

銃という武器を扱うことの重さを理解し、平和の大切さを改めて実感する貴重な体験でした。

🎖️10. 射撃技術の向上

回数を重ねるうちに、少しずつコツを掴めるようになりました。

🎯命中率向上のポイント

  • 息を吐きながら引き金を引く
  • 照門と照星を正確に合わせる
  • 引き金は指先ではなく指の腹で引く
  • 撃つ瞬間まで狙い続ける

最初は10発中2発しか当たらなかった私も、最終的には7発は的に当てられるようになりました。わずかな上達でしたが、その成長を実感できた瞬間は格別でした。

まとめ

射撃訓練は、予備自衛官補にとって最も印象的で、最も緊張する体験です。初めての小銃との出会いは、単なる技術習得ではなく「命と向き合う時間」でした。この体験を通じて得た冷静さ、謙虚さ、協調性は、その後の人生において大きな財産となっています。